D'ac

元銀行員。子育てられ中。

イールドカーブ・コントロールって結局テーパリングなんでしょ?

「日本語話せや!」という怒声が響いてきそうです。

 

ちょっと人に訊かれたので書いていきたいのですが、とりあえずその前にタイトルの翻訳をしておきたいと思います。

イールドカーブ・コントロールって結局テーパリングなんでしょ?  短期金利を下げて長期金利を上げるってことは結局、金融引き締めなんでしょ?

イールドカーブというのは、短期金利から長期金利までを線で結んだものです。それをコントロールする。つまりは、長期金利を上昇させて短期金利を下げることで金利のカーブの傾斜をつけよう、というのがイールドカーブ・コントロールの中身です。

テーパリングというのは、金融引き締めのこと。国債を買って市場にお金を流し込んだり、金利を下げて借り入れしやすくするのを金融緩和といいます。景気が悪いときに、中央銀行は伝統的には金利を下げ、異例な方策として(異次元緩和とか言われたりします)、国債などの買い入れを行って金融を緩和することで景気を刺激します。逆に、景気が良く、加熱しそうなときには、それとは逆のことを行います。国債の売却、金利引き上げ、ですね。

今回のイールドカーブ・コントロールは長期金利を上げる、ということが含まれます。そのため、タイトルのとおり、イールドカーブ・コントロールって結局テーパリングじゃないの? という質問につながる。というわけです。

 

今のところテーパリングではない。

簡単に言うと、今のところテーパリングではありません。
確かに長期金利を上昇させる、というのは、金利引き上げということなのでテーパリングのようにも受け止めることもできます。
とはいえ、金融政策の操作対象は短期金利のみであった伝統的な金融政策の枠組みの中では今回の長期金利を操作するといった枠組みをそのまま適用することは難しそうです。

ちなみに日銀のHPには長期金利の誘導は難しいと書かれてあります。

Q6. 長期金利は誘導しないのですか?

長期金利の形成は、資金の需要量と供給量のバランスだけでなく、将来のインフレ率に対する市場参加者の予想や将来の不確実性等によって大きく左右されるため、オーバーナイト物金利のように資金量を調節して誘導することは容易ではないのです。むしろ、長期金利の形成は市場メカニズムに任せて、そこから市場参加者の予想等に関する情報を読み取れるようにすることが、とても重要なのです。

日本銀行の金融調節を知るためのQ&A :日本銀行 Bank of Japan

 

黒田日銀総裁は総括後の会見で、テーパリングではない、と日銀の枠組み変更の意図としてテーパリングが含まれないことを明確に否定しています。

 

とは言っても今後のテーパリング時には今回の枠組みが生きる。

今回は明確にテーパリングであることが否定されているわけですが、それでも、今回の枠組み(イールドカーブ・コントロール)の導入は今後のテーパリングを導入するうえでの障壁を大幅に下げたものと受け止めることは可能です。

今現在日銀は年間80兆円の国債買い入れを行っています。
これがもし、年間50兆に減額されるとなったら? 国債買い入れ減額はマーケットに大きな影響を及ぼすことは間違いありません。イールドカーブ・コントロールの基においては、目標はあくまでも金利。国債買い入れはその金利操作に資する、という判断の基に行われるわけです。
つまり、国債購入に幅をもたせることができる。

日銀は国債購入を行っていますが、段々買い入れられる国債の量が減ってくることが指摘されています。
国債購入という緩和手段は早晩限界を迎えるというわけです。そんなときにも、今回のイールドカーブ・コントロールの枠組みは有効性を訴えるには便利なのではないでしょうか。

 

おわり

今回の枠組み変更をもって、日銀の異次元緩和は失敗だった、と評する向きもあります。そして、今回のイールドカーブ・コントロールが成功する絵図も描けない、と。
それについて、評価する手腕は私にはありません。だって、夫にわかりやすく説明するくらいしかできないのですから(ブログコンセプト)。

多くの人が怪しいな、と疑い、景気は良くならないと判断する、その空気こそが今の日本を作っているのだから、もしかしたら何しても成功しないのかもしれません。その空気を覆すような魔法を日銀が持っているようにも思えません。そもそも、日銀が金融緩和で下支えしている間に政治が構造改革をして、日本全体の空気を引っ張っていく、というのが当初の目的だったはずなのに、いつのまにか日銀が全部色々せなあかん、みたいな状態。

なんかごちゃごちゃしてきましたが、まとめておきます。

 

イールドカーブ・コントロールはテーパリングじゃない。
けれど、将来のテーパリングを見越した枠組み変更である。
とりあえず、現時点での変更はほとんどない。

 

ということで以上です。

 

もっと詳しく色々知りたい人は日銀のHPを一番に読みましょう。

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