4月はなぜ住宅ローン金利が上昇したのか? 借り換えるなら今がベストか?
2016年4月は多数のメガバンクの住宅ローン金利が引き上げられました。
住宅ローン金利の基準となる長期金利(10年物国債利回り)は低位推移しているにも関わらず、なぜ4月は住宅ローン金利が上昇したのでしょうか。そして、この4月の金利上昇が今後の住宅ローン金利上昇の序章となるのでしょうか。
今後の住宅ローン利用を考える上で、今回の引き上げの裏にあるものについて考えておく必要があるのではないでしょうか。
住宅ローン金利は長期金利だけによって決定されるものではない。
住宅ローン金利の水準を占う上で、10年物国債の金利水準が参考になることは皆さんご存知のことと思われます。月末近くの長期金利の水準をみると大体次の月の住宅ローン金利がどのくらいになるのか大体の予測がつきます。
ただ、住宅ローン金利はこの長期金利の水準だけで決定される・・・と思っていると思わぬところで足元を掬われることになるかもしれません。
住宅ローン金利は、要するに、銀行の商品の値段。銀行はその商品の値段を独自に決定することができます。長期金利は銀行がその商品を仕入れるための値段。その値段に対して、どれだけの利益を出すか、というのは、究極のところ、その銀行が自由に決定できる事。つまり、長期金利が低位推移していても、銀行が独自の経営判断で住宅ローンの価格(金利)を高く設定したいと思えば、住宅ローン金利が急上昇することもありうるわけです。
実際に、長期金利(10年物国債の利回り)は一律であっても、銀行によって住宅ローン金利は違います。
「長期金利下がっているのに金利上がっているじゃないか!」なんてならないように、金利水準以外の要素が影響することもあるということは頭に入れておきたいところです。
4月の住宅ローン金利はなぜ上昇したのか。
これは、上記の経営判断、というところが大きいのですが、まず、「先月3月時点の住宅ローン金利が経営判断で低すぎた」というところを見逃さないようにしたいところです。3月は言わずと知れた決算時期。銀行も他の企業の例に漏れず、自社シェアの拡大のために、通常より低い金利を提示したわけです。
つまり「4月に金利が上昇した」というよりも、「特別セールだった、前月の金利水準を通常運行に戻した」という説明が正しいと思われます。
実際、3月の金利は低かったのですが、店頭提示金利(といわれる基準金利)の引き下げではなく、さまざまな特約の結果としての金利引き下げでの応対となっていました。ということで、「4月の住宅ローン金利引き上げ」というニュースに一喜一憂する必要はなさそうです。
今後の金利はどうなるか。見逃せないマイナス金利の影響。
日銀がマイナス金利導入を発表して以降、長期金利はマイナス域を推移しているわけですが、マイナス金利がそのまま住宅ローン金利の低下につながるかどうかは怪しいところです。
マイナス金利は言ってみれば、「銀行への課税」。銀行の経営判断としては、その負担を住宅ローン金利上昇という形で顧客に転化させる可能性は十分ありえます。マイナス金利による金利上昇・・・ですね。実際にマイナス金利を導入しているスイスやデンマークでは既に一部銀行は住宅ローン金利を上昇させたとのこと。
そう考えると、現在の住宅ローンの低金利が今のまま長く続くことにポジティブではいられないのかもしれません。
ただ、フラット35の金利は長期金利水準に素直に反応することを考えると、フラットの存在が銀行の金利引き下げ圧力になる可能性もあります。
まあ、先日知人の銀行員と話していたときには、「もう、フラット35で手数料収入でもいいかもしれんなあ」なんて言ってましたが。
住宅ローンの低金利競争に銀行が息切れする日も意外と近いのかもしれません。
以上。